巨匠シューリヒトが、フランス国立放送管弦楽団を指揮した、シューベルトの「未完成」とハイドンの「ロンドン」。シューベルトは1963年のブザンソン・フェスティバル、ハイドンは1955年のでのモントルー・フェスティバルでのライブ。
シューリヒトは好きで、いろいろCDを持っているが、この二つのライブは未聴であった。2年ほど前に、このお店で安めの値段で出ていたので、勉強のために購入。ときおり耳を傾けている。シューリヒトをLPで聴くのは、これが初めてであった。
A面の「未完成」。第1楽章は、もの哀しさが極まっている。優美は優美だが、それよりも内面的な深さと厳しさを重視している。何か“運命”といったものを感じさせる。第2楽章は、安らぎの中で追憶にふけるような趣がある。しかし、そこにはやはり哀しみというものがあって、それが深みをもたらしている。二つの楽章に統一感のある演奏だ。
B面の「ロンドン」。第1楽章は、序奏からして緊迫感が凄い。それは主部に入っても続く。楽しさよりも格調の高さを感じさせる。第2楽章は、寂しさをはらんだ安らぎというべきか、複雑な感情を表現している。このような表現で、この指揮者にかなう者はないと思う。第3楽章は、楽しさと格調が一体化している。躍動感も十分。第4楽章は、白熱具合が凄い。聴いていて、精神が高揚する。全4楽章を通して、レベルの高さとテンションの高さが保たれている。
2曲を聴いて思うのは、やはりシューリヒトは真の巨匠であるということである。
録音はかなり優秀。ライブのリアルさが十分捉えられている。マスタリングも鮮明である。モノラルの集中力が素晴らしい。
これは非常な名盤だと思う。購入して本当に良かった。大事に取り扱って愛聴していこうと思っている。宝と言っても良いぐらいである。
総評: 5.0 (1件)