レコード・クリーニング・マシンのすすめ
私も当店のホームページ中の「LPケア法」でもお話してきたが、「LPクリーニングには、単なる“ノイズ除去”効果だけではなく、“音質向上”にも大きな貢献がある」と言うより、LPをクリーニングすることは、音楽をよりいい音で感動的に聴くために、絶対に必要なことである。
■新品LPでも不完全?■
そのよい例として、「新品LPをクリーニングすると、音質が良くなる!」ということをご存じであろうか? レコード・クリーニング・マシンをお持ちの方は、ぜひ試していただきたい。
まずは、新品のLPを開封したら(ちょっとでいいので)すぐに聴いてみて、直ちにLPをクリーニングして再試聴してほしい。ほとんどの場合、クリーニング後の再生音には、クリアーさと音楽の彫りの深さなどにおいて、明らかに向上がみられる(聴こえる)こと間違いない。
この理由は、まだ明らかにはなっていないが、クリーニングした後の洗浄液の変化(白く濁ることがほとんど)からすると、新品のLPでもなにか表面上に不純物が付着していることが容易に推察できる。
古いレコードならなおのこと、これら不純物に加えて、長年にわたるリスニングによる埃などの影響で再生音にはいろいろな「不純物」がまとわりついてくる。それを一掃するのが、レコード・クリーングの使命なのである。
そのような意味では、クリーニングのためのツールは、私にとっては単に音質向上ためのアクセサリーと言うよりは、重要なコンポーネントのひとつであるといっていいだろう。
さて、このレコード・クリーニング用のツールであるが、そのベストの一つとしては、「バキューム式」のマシンがあげられる。
この原理はいたって簡単で、レコード表面に洗浄用のクリーニング液をふりかけ、それをブラシでこすりながら、レコード面の汚れなどを浮き立たせる。その直後、掃除機と同じ原理で即座にクリーング液と汚れを一緒に吸い取ってしまうということである。
このマシンでクリーングされたLPは外見上でも見違えるように綺麗になり、実際に聴いてみると、塵などによるノイズがほとんど気にならなく効果のほか、再生音も生き生きとし、音楽のディテールがどんどんわかるようになる。
この方式のクリーニング・マシンは、かなり前から発売されており、私も1970年代の後半には使った記憶がある。
一方、その効果の半面、いくつかの欠点がある。大きく分けて、「騒音」と「価格」である。
さきほど紹介したように、このマシンのバキュームの原理は「掃除機」そのものあるため、かなりの騒音が発生する。(オーディオファイルの私の友人は、あまりにもマシンからの騒音が大きいため、ご家族に夜間のクリーリングを禁止されたそうである。)
また、今話したような機構のため、どうしても構造が複雑になるため、一般に考えられるレコード・クリーナーよりもかなり割高(効果から考え、コンポーネントの一因ととらえれば、さほど高価とは思えないが・・・)となってしまう。
しかしここ数年は、各メーカーから新しい発想の、リーズナブルな価格のクリーナーが発売されてきて、私もこれらのなかからいくつかを使ってきたが、昨年から今年にかけて、価格と性能のバランスの取れた決定版というべきマシンが誕生した。
それも個性あふれる二機種も!
では、甲乙つけがたい二機種の紹介を。
■クリーンメイトNEO■
まずは「Clean Mate(クリーンメイト) NEO」。実は、このマシン、数年前に誕生した「クリーンメイト」(現在は製造中止)の後続機でクリーニングマシンにしては珍しい国産(新潟・燕三条より)である。
(クリーンメイトの外観)
前機種の「クリーンメイト」も素晴らしいマシンであった。吸引力もトップクラスで、価格も非常にリーズナブルであった。私も、さっそくこれを二台購入して、プライベートと店舗用にずっと使用してきた。
さてここで、新しいマシンの紹介をちょっと。
写真のように、デザインも前回の「メイト」とくらべるとかなりスマートとなった。(デザインは、当店でも販売しているレコードラックなどを設計した倉田裕之氏が担当)
さて、実際に使ってみると、吸引力はかなりアップしていることがすぐにわかる。(約2割の向上) 吸引時のノズルの様子は下の写真をご覧いただきたい。
(吸引オフ)
(吸引オン)
そして吸引後は、ノズルから乾燥用の風が放出されて(写真4)、クリーング後はすぐにLPをターンテーブルに乗せて聴くことができるようになる。
また、マシンのターンテーブルには和紙マットが標準装備され、除電効果も期待できる。気になる騒音であるが、吸引モーター音は90dbから65dbまで静かになった。
(Dryアーム)
(除電和紙マット)
価格はオープンであるが、当店では150,000円(税込み)で取り扱い中。(ベーレンプラッテオリジナル特典付)
■キース・モンクスのPRODIGY(プロディジー)」■
クリーニング・マシンの「元祖」そして名高いキース・モンクス・オーディオは、共同で初の商業用のレコード・クリーニング・マシンを英国BBC放送と共同開発した。このマシンは、世界の放送局やオーディファイルに愛されてきた。
わが国でもこのマシンは、長い間多くの人に愛用されてきた(私も20年以上にわたって使い続けてきた)が、このたび、この小型ヴァージョンが発売された。それが、ここで今回紹介する、「Prodigy(プロディジー)」である。
キース・モンクスのProdigyについて
本機の外観は、前回紹介した「クリーンメイトNEO」(以下NEO)より小型に、そして軽量になっている。(Prodigyは約5キロ、NEOは11キロ)
(キース・モンクスの「Prodigy」外観)
ProdigyもNEOとクリーニングの原理は同じで、レコード表面に洗浄用のクリーニング液をふりかけ、それをブラシでこすりながら、レコード面の汚れなどを浮き立たせる。それを、掃除機と同じ原理で即座にクリーング液と汚れを一緒に吸い取ってしまうというもの。
NEOとの大きな違いは、レコードを洗浄した後の廃液の吸引方法である。吸引のためのノズルは。写真にあるちょうどレコードプレーヤーのトーンアームのようなバキュームアームに装着されている。これが、レコードの溝に沿って丁寧に廃液を吸引する。
(バキュームアーム)
(バキュームアーム拡大)
吸引に必要な時間は、後述するNEOにくらべて、ちょっと長めのレコード片面で約二分半かかるが、その分吸引用のコンプレッサーが小さくできているため、従来のバキューム式クリーナーよりも吸引時のノイズが極めて小さい。(以前従来のマシンで、そのノイズのため夜間の使用をご家族から禁止された友人がいたと書いたが、これならたぶん大丈夫かも。)
ボディや吸引アームの素材は竹である。ナチュラルな竹は、低反発素材で、騒音や振動を吸収し、防水性、帯電防止性などに優れているとのこと。
価格は、209,000円(洗浄液などアクセサリー付・税込み)
なお、別売りでSPレコード、CDなどの12センチのデジタル・メディア用のクリーニング液なども準備されている。
さて、両者の違いは?
NEOとProdigyについて、ざっとその使い方などを紹介してきたが、両者は原理的には同じではあるが、使い勝手などに大きな違いある。
まずはバキューム時のノイズ、これは圧倒的にProdigyに軍配が上がる。
しかしながら、洗浄に要する時間は、NEOのほうが文句なく早い。一枚当たりにかかる時間(両面)は、Prodigyは約10分、NEOはその半分以下だ。
デザイン的な要素、クリーニングにかかる時間そして騒音などを考慮して、自分に合ったマシンを選んでいただきたい。
詳しい両者の特色などは、直接店主にご相談ください。
当店では、これらのマシンをご購入の方全員に当店のオリジナル特典である、BPオリジナル グラシン紙内袋を10枚お付けいたします。内袋の詳細はこちらです。