新LP鑑定法 その2(英DEECA編)
金子 学
以前(といってもかなり前であるが)、「LP鑑定法」と題して、レーベルやジャケットなどから、そのレコードが、オリジナル盤(初版)かどうか、あるいは、いつごろにプレスされたかを推測する方法について書いたことがある(詳しくは、当店のホームページを参照のこと)。
今回は、その原稿執筆以降わかったことを加えて、より詳しい「鑑定法」についてお話ししたい。今日は、その一回目。
ドイツ・グラモフォン(DGG)
まずは、当店でももっとも取扱量の多い、ドイツ・グラモフォン(DGG)から。
モノラル時代のDGGのセンターレーベルのデザインは、大きく分けて二つに分けられる。「LP33」と「チューリップ」である。
LPのごく初期、つまりLPレコードとSPレコードが同時発売されていた頃のレーベルと思われる。
センターレーベルの中心部に金色で「LP33」と印刷されているレーベルだ。(写真1)
(写真1)
たぶん、SP用の機器でLPレコードを再生してしまって、LPの音溝を台無しにしてしまうことを防ぐために、「このレコードは、LPである!」ということを強調し、注意を喚起するためのものと思われる。このレーベルは、LP登場直後ものに限定されているため、非常に珍しい。(また、ジャケット装丁もほとんどが、丁寧に糸で縫われたものである。)
1950年代中盤にあった「LP33レーベル」も、50年代も終盤になると、LPの普及に伴い廃止され、クラシックファンにお馴染みの「チューリップレーベル」(Tレーベル)になってくる。(写真2)
(写真2)
モノラル時代のTレーベルは、大きく分けて、二つのタイプに分けられる。
その見分け方は、レーベル中心部のセンタースピンドル右にある「33」の数字の周囲が、四角形であるか、逆三角形であるかで判別する。(写真3と4)
(写真3)
(写真4)
プレス時期としては、33の周囲が四角の方が初期のようである。
この両者の違いは、私にはまだちょっとわからない。(EMTの930や927のイコライザーカーブの切り替えスイッチには、これと同じマークのポジションがあるが、不勉強ものの私には不明。わかる人がおりましたら、ご一報を!)
なお、あまり知られてはいないが、DGGの1960年代中盤までのステレオ録音には、モノラルカッティングのLPが存在する。これらを聴くと、ステレオ盤にはない、分厚い音像から新たな発見をすることがある。もし、機会があったら、ぜひともトライしてほしい。
ステレオ時代のレーベル遍歴もかなり複雑だ。
ステレオ期のセンターレーベルのデザインは大別して大きく2つに分けられる。チューリップレーベル(写真5)とブルーラインベーベル(写真6)である。
(写真5)
モノラル期からあるTレーベルは、レーベルの外周部が白と青のチューリッで囲まれたもの、BLレーベルとは、チューリップの代わりに青の二重線が印刷されたものである。
(写真6)
TレーベルのステレオLPはさらに2つのグループに分けられる。一番古いのは、レーベル外周のチューリップの内側の「著作権に関する注意」がALLE HERSTELLERから始まるドイツ語の文章になっている。(写真7)
(写真7)
もうすこし後の盤では、そこがMADE IN GERMANYから始まっている。(写真8)
(写真8)
ジャケットを見てみると、TLレーベルの古い盤(ALLE)のほとんどは表面上部のDG独特の黄色い部分(額縁)の下部の「STEREO」の部分が赤く塗りつぶされている。これを、マニアは「赤ステレオ」と呼んでいる。
また、DECCAなど同じように、1960年代の中ごろまでは、ジャケット裏の右下の部分にジャケットの印刷年月が小さく印刷されている。
さて、この新旧のTレーベルのプレス時期の件であるが、かなり状況は複雑だ。
レコード番号でいえば、138で始まる6桁のLPには、すべて写真7のような古いレーベルが存在するが、139で始まる後の時期のリリースのものでは、写真8の後期のレーベルしかないものもある。(それどころか、このあと紹介する、BLレーベルのみしか見かけないものも存在する。)
このあたりは、公式な見解がなくすべて経験則なのでそのつもりで見てほしい。
また、ジャケットについても前述の「赤ステレオ」ジャケットに入っているLPのすべてが古いプレスとは限らないので、マニアは要注意だ。
1968年頃からプレスされたLPはすべてこのレーベルデザインとなる。(番号でいえば、139始まる6桁のLP、2530や2531で始まる7桁のもののすべて。写真6)
(写真6)
この頃のLPはカラヤン始め、ドイツやオーストリアを中心とする巨匠たちの名演・名録音揃いなので、オーディオファイルであれば、数枚いや数十枚単位のコレクションをお持ちの方も多いに違いない。
実は、このBLレーベルも、小さな違いに注意すると数種類のタイプに分けることができるが、今回は省略。
やがて、時代はデジタル録音の時代になってくる。DGGも基本的にはBLレーベルのデザインを踏襲するが、そのなかに「DEGITAL RECORDING」のロゴを加えた図案を採用してくる。(レコード番号でいえば、2532で始まる7桁、あるいは、4から始まる6桁。ちなみに、4から始まる6桁番号のあとのハイフンの後の数字は、メディアの種類を表している。1はLP、2はCD、4はカセット。)
(以下次号)
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