かつてN響の名誉指揮者を務めていた、東ドイツの名指揮者オットマール・スウィトナーが、シュターツカペレ・ベルリンを振ったベートーヴェンの「田園」。何となく良さそうだと直感的に思って購入した。スウィトナーは、東ドイツが崩壊してからいささか地味になってしまったが、子供のころにN響のテレビなどで聴いて、良い指揮者だと思っていた。しかし、現在もあまり詳しくはない。
さて、この「田園」、第1楽章の出だしから、軽快で爽やかである。田園に着いた時の楽しい気分が良く表現されている。聴いていて、段々感情が高まっていく。第2楽章もすっきりとして、もたれることがない。それでいて、おだやかに心が落ち着く。特につややかな弦が美しい。第3楽章は踊りの音楽という感じが良く出ている。さまざまな管楽器の活躍が楽しい。けっこう力強さもある。第4楽章はさらに力強さが増すが、美しさというものは保たれている。なるほど嵐のときでも自然は美しい。第5楽章はほっとした感じと湧き上がる喜びに満ちた演奏。自然への静かな感謝も良く表現されている。以上、全5楽章の流れとバランスの良い名演である。
この東独エテルナ盤の録音はクリアーで、個々の楽器のパートが良く分かる。それでいて、そこはかとない上品さが漂う音である。
とても良い買い物が出来たと思う。愛聴していきたい。また、スウィトナーの他のベートーヴェンの交響曲もLPで聴いてみたいと思った。